akewatashi

建物明渡の強制執行の流れ  賃料不払などを原因として賃貸借契約を解除しても、賃借人が自ら立退きをしない場合には、裁判所で判決などを得たうえで強制執行の申立てをする必要がある。このような建物明渡しの執行申立てがあると、裁判所の「執行官」が現地に赴いて強制執行を行うこととなる。 もっとも、現実には、賃貸建物に相手方が居住している場合などには執行官がいきなり強制執行をすることはなく、1カ月以内の期限を定めて相手方に任意の退去を促す。これは、「明渡しの催告」と言われている。執行官は、ねばり強く任意退去を促すが、相手方から罵声を浴びることも少なくなく、仕事とはいえ、執行官は本当に大変な職業だと思う。  もしも、相手方の事情で任意の明渡しに1カ月を超える期限が必要な場合は、執行官が裁判所の許可を得て1カ月を超える期限を定めることになる。  そして、明渡しの催告をしたときは、執行官は、明渡しの催告をした旨、引渡し期限及び相手方が賃貸建物の占有を移転することを禁止されている旨を記載した公示書を、建物の中の適宜の場所(あまり目立たないところ)に公示する。  この段階で、執行官は、相手方に対し、明渡しの催告に応じない場合は現実に強制執行を行う旨を説明していくので、8割方のケースでは、催告期限内に相手方が任意に退去してしまう。その場合には、催告期限が到来した日に執行官が執行完了を宣言し、強制執行が終了する。  しかし、相手方が任意に退去しない場合には、強制執行を実行することになる。  現実に強制執行をすることになった場合には、執行官と打ち合わせのうえで、申立人側で運送業者、倉庫業者、合鍵業者を手配しなければならない。  強制執行の当日は、執行官は、必要があるときは鍵を強制的に開けて、相手方の占有する建物に立ち入ることができる。これらの執行官の行為を妨害する者は執行妨害により逮捕されることもある。  執行官は、建物の中の相手方の家財道具などの動産を相手方に引き渡さなければならないが、相手方が家財道具をそのままにして夜逃げをしてしまったような場合は、原則として、運送業者に動産を運ばせて、倉庫業者に保管させることとなる。これは、建物の明渡しを行うとともに、動産を執行官の管理の元で保管するという意味があるためだ。  倉庫業者に保管させた動産については、別途競り売り期日を設けますが、最終的には、申立人が落札をして処分するしかない。もちろん、運送業者、倉庫業者、合鍵業者等の費用は相手方に請求することができるが、現実に支払ってもらえる見込みがないケースが大半で、最終的には申立人が負担せざるをえない。  このように、建物明渡しの強制執行は精神的にも金銭的にも大きな負担を強いられる。したがって、日頃から賃料の入金管理を適切に行って、仮に賃料延滞が発生したら早期に交渉することが必要と考えられる。